ブラインド採用
[ブラインドサイヨウ]
「ブラインド採用」とは、選考過程において名前や性別、年齢、学歴といった個人情報を取り除き、能力のみで応募者を評価・採用する取り組みのことを指します。ブラインド採用の目的は、評価者自身も気づいていない先入観や偏見を排除すること。これにより、従業員のダイバーシティ推進にもつながると考えられています。
ブラインド採用のケーススタディ
なぜ会社には似たような人材が集まるのか?
ブラインド採用で、社内に新たな風を
会社の中を見渡すと、従業員のさまざまな共通点が見えてきます。特定の大学の出身者が多かったり、なぜか野球部出身者が多かったり。容姿やファッションが似ているといった共通点もあるかもしれません。明確な採用要件ではなかったとしても、選考を進めているうちに「うちの社風に合いそうだ」と、つい似たタイプを採用してしまうケースは多いようです。
スタンフォード大学のクレイマン・ジェンダー研究所が行った、有名な実験があります。70年代、アメリカでは、オーケストラの団員のうち、女性が占める割合はわずか5%でした。そこで、選考の過程でバイアスが働いているのではないかとの仮説に基づき、演奏する姿が見えないよう、幕を挟んでオーディションを実施する実験が行われました。その結果、一次審査を通過した女性の比率は、なんと50パーセントを越えたというのです。
アメリカや韓国などでは、こうしたアンコンシャスバイアス(無意識の偏見)による従業員が画一化や、雇用機会の不平などを防ぐため、ブラインド採用を導入する企業が増えています。
アメリカでは、日本における学歴や性別などのバイアスに加えて、人種も採用に影響しているのが実情です。しかし、IMBの子会社が実際にブラインド採用を導入したところ、純粋に能力を評価するこの方法で入社した従業員が業務成績の上位を占めるようになったそうです。
韓国は超学歴社会で、名の知れた大学を卒業していないと大企業への就職は難しく、履歴書に貼付する顔写真の良し悪しも、結果を大きく左右するといわれてきました。そこで2017年6月、文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、若年層に公正なスタートラインを保証するため、公務員や公共団体での選考には「ブラインド採用」を導入するよう指示しました。
採用に多様性が求められているのはなぜでしょうか。それは、産業構造が変わってきているからです。日本の場合、製造業が中心だった高度経済成長期においては、時間をかけて生産すればするほど売り上げが上がっていました。そのため、組織に多様性があるかどうかは重要ではありませんでした。しかし、物を作れば売れる時代は終わりました。今求められているのは、イノベーション。新たなアイデアを生み出すには、違う価値観やバックグラウンドを持つ人との出会いが欠かせないのです。