サイレントお祈り
[サイレントオイノリ]
「サイレントお祈り」とは、就職活動を行う学生たちの間で使われる俗語です。企業からメールで送付される不採用通知には、末尾にかならず「今後の活躍をお祈りいたします」などの一文が添えられていることから、就活生はこれを「お祈りメール」と呼びますが、最近は、事前に「通過者のみ連絡」などの説明がなかったにもかかわらず、不採用者にはこのお祈りメールさえ届かないケースが増加。このように、企業から不採用について何の音沙汰もないことを「サイレントお祈り」と呼び、学生や学校関係者からは企業の不誠実な対応を批判する声もあがっています。
サイレントお祈りのケーススタディ
就活生の7割超が遭遇する不快な対応
内定辞退に備え“補欠”確保のねらいも
「今後のご健闘をお祈り申し上げます」「充実した学生生活を送られることをお祈りいたします」――そんな型通りの末文で締められた不採用通知メールを、就活生が半ば皮肉を込めて「お祈りメール」と呼ぶのは、不採用という意に沿わない事実への不満や落胆からだけではないのかもしれません。判で押したような紋切り型の文面や、選考結果に対する説明もなく、低姿勢ながらどこか形式的に見える対応を“慇懃無礼”と受け止め、不快に感じる学生が少なくないようです。
記憶に新しいのは昨年2月。折しも就職活動が本格化し始める時期に、ある大手企業が就活中の女子学生を題材としたテレビCMを放映したところ、「志望企業から何十通ものお祈りメールが届く」という描写に対し、就活生やその親とみられる視聴者から「あまりにリアルで心が痛む」との意見が寄せられ、1ヵ月ほどで放映を中止したことが話題になりました。
しかし一方で、企業によってはお祈りメールさえ送らない、不採用者には一切通知しない、「サイレントお祈り」と呼ばれる対応が目立つといわれます。その場合、学生は選考結果が確定しないまま、宙ぶらりんの状態を過ごすことになり、就職活動の先の見通しも立てられません。しかも「サイレントお祈り」の多くは、「合否にかかわらず連絡する」と約束しておきながら、何の音沙汰もないといいます。これでは企業の対応も、失礼、不誠実のそしりは免れないでしょう。
NPO法人ライフリンクが2013年に実施したアンケートによると、就活中に「サイレントお祈り」を経験したことがあると回答した学生は74%、就活生一人あたりのサイレントお祈りの経験回数は平均4.8回で、五人に一人は10回以上経験しています。
なぜ企業はこうした不誠実な対応に至ってしまうのでしょうか。よく指摘されるのが、「採用担当者の過重負担」という点です。応募者の母集団拡大を図る一方で、採用部門のコストは縮小。そこに“就活後ろ倒し”などによるスケジュールの過密化も加わり、結果として不採用者への連絡業務にまで手が回らない、といった状況になっているようです。ただ、中には選考通過者や合格者の内定辞退に備えて、“補欠”の人員を確保しておくために、あえて選考結果の通知を曖昧にしておくといった、ややアンフェアなケースも。
不採用とはいえ就職活動を離れれば、学生もまた多くの企業にとって重要な顧客候補でしょう。彼らがSNSなどを通じて、一瞬のうちに情報を拡散させることを考えれば、「サイレントお祈り」などの不誠実な対応で、彼らに不快な思いを与えることはきわめて危険といわざるをえません。