コンピテンシーの活用方法
[コンピテンシー]
「コンピテンシー(competency)」とは、高い業績を挙げている人材に見られる行動や思考、判断基準などの特性を指します。コンピテンシーは採用や人材育成、人事評価などで効果を期待できます。また、成果を出すために従業員の取るべき行動が明確化することで、業績向上にもつながります。
採用面接
自社で活躍している従業員のコンピテンシーを基に採用基準を策定することで、入社後に活躍してくれる人材を見極めやすくなります。採用基準を社内で共有することで、面接官の主観を排除し、公正かつ客観的に評価することもできます。下記の手順で実施します。
1)理想の人材像を明確化する
コンピテンシーを抽出し、応募者に持っていてほしいコンピテンシーの観点から優先順位をつけ、採用基準を策定します。価値観や達成動機といった後天的に伸ばすことが難しいものや、会社にとって重要度の高いものを選ぶことが重要です。
2)面接官に訓練を行う
応募者の回答があらかじめ設定した採用基準をどの程度満たすのかという認識を統一する必要があるため、面接官に対して、応募者のコンピテンシーを見極めるための訓練を実施します。ケーススタディを行うことも効果的です。
3)面接を実施する
面接ではマクレランドが開発した「行動結果面接(Behavioral Event Interview = BEI)」を取り入れるとよいでしょう。この手法を用いることで、応募者の持つスキルや価値観、行動の特性を読み取ることができます。具体的な流れは下記の通りです。
- 職務上で経験した重要な状況について、具体的なエピソードを話してもらう
質問例:
「あなたの成功体験を話してください」
「失敗したとき、どのように対処しますか」
「これまでにあなたが立てた目標を教えてください」 - 応募者が話したエピソードについて、深く掘り下げていく
- 回答の内容が、内容が事前に設定しておいた採用基準とどの程度マッチするかを判定する
人事評価
コンピテンシーをもとに人事評価を行うことで、定量的な目標だけでなく、成果を出すまでの定性的な過程を評価することができます。 また評価の基準が明確になることで、主観による評価のブレが少なくなるほか、従業員にとっても評価の納得感が高まる効果があります。導入手順は下記の通りです。
1)ハイパフォーマーからのヒアリング
部門ごとに高い業績を挙げた従業員にヒアリングを行います。「何をしたか」といった行動だけではなく、「なぜその行動を取ったか」といった思考や価値観も明らかにすることが重要です。該当する人物がいない場合は、理想とする人材モデルを想定し、行動や達成動機を設定します。
2)評価シートの作成
部門や階層ごとに評価シートを作成します。シートには、評価項目や評価基準などを盛り込むことが必要です。
3)評価の妥当性を検証する
実際に従業員を評価基準に照らし合わせ、評価が適正かどうかを確認します。高い業績を挙げている従業員と平均的な従業員のどちらもテストしてみるとよいでしょう。
4)評価する
実際の評価の場面で用います。評価の際には、「優秀である(スキルがある)か」よりも「成果につながっているか」を意識します。
人材育成
人材育成の場面でも効果を発揮します。たとえば、ハイパフォーマーを育成する研修内で「高い業績を生み出す行動」や「行動のもととなる思考」を従業員に浸透させることで、効率のいい人材育成が可能になります。大事なのは、行動の手順を教えることではなく、行動を生み出す源泉となる価値観や思考パターンを理解してもらうことです。
従業員一人ひとりに目標を設定させることも効果的です。自ら目標を設定することにより、「自分はどのような行動をするべきか」「どのように考えればいいか」をそれぞれが考え、行動に移すようになります。その結果、従業員が主体性を発揮する可能性が高まります。
- 【参考】
- コンピテンシーの本質~誤解だらけのコンピテンシーを使えるものとするために~|日本の人事部
- 大学新卒者採用において重視する行動特性(コンピテンシー)に関する調査|独立行政法人労働政策研究・研修機構
- 日本企業の大学新卒者採用における コンピテンシー概念の文脈(岩脇千裕、2007)
- 日米におけるコンピテンシー概念の生成と混乱(加藤恭子、2011)
- コンピテンシーとは、何だったのか|リクルートワークス研究所
- コンピテンシー・モデリングに関する一考察(加藤恭子、2020)
- ビッグ・ファイブとは|日本の人事部
- キャリア開発|楽天株式会社
- Kuraray Report2021|株式会社クラレ
- 【参考文献】
- 『コンピテンシー面接マニュアル(川上真史 ・ 齋藤亮三 著)』
- 『コンピテンシー・マネジメントの展開(完訳版)(ライル・M.スペンサー&シグネ・M.スペンサー著)』
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