
面接でのガクチカ・自己PRが学生に与えている弊害
新卒の採用場面での質問としてガクチカ・自己PRは、どの企業も必ずと言って良いほど実施されている質問です。1990年代後半からこの質問がエントリーシートや面接で一般的になりました。それによって学生にとっては「就活のためにはガクチカ・自己PR用のエピソードを準備しないといけない」ということが常識になっています。そのエピソードを作るために、アルバイトやクラブ・サークルでの活動をする必要があると考えている学生が数多くいます。
当社が実施した25卒就活生の調査でも、ガクチカ・自己PRで話されるエピソードは、アルバイトやクラブ・サークルの話が一般的です。逆に学生の本分である日常の学業場面での行動を選ぶ学生は17%程度です。その理由は「インパクトのあるエピソードが必要」という認識が学生の間では一般的だからです。
一方で、企業の人事の皆さんに聞くと「エピソードにインパクトは求めていない」と回答される場合が多いのも事実です。しかしながらガクチカ・自己PRのエピソードのためにアルバイト・サークルをする必要がある。また日常の学業は就活ではあまり役立たない。という認識が学生間では一般的になっている現実があります。企業の意図とは別にガクチカ・自己PRという質問が、結果的に学生を課外活動に駆り立て、相対的に学業に力を入れる意欲を阻害していることになってしまっています。
また、ガクチカ・自己PRでは、口頭で具体的なエピソードを話すだけで、そのエピソードを証明するエビデンスは必要ありません。それによって就活生の間では、脚色することが一般的になっています。また、生成AIを利用すると極めて簡単に架空のエピソードを作ることが可能になっています。つまり、就活でのガクチカ・自己PRなどの質問が、ウソ・脚色・盛る学生を増やしていることになってしまっています。
人事・採用に関わる方々によるガクチカ・自己PRという質問が、その意図に反して学業への意欲を阻害し、ウソをつく学生を増やしてしまうという残念な結果になってしまっているのです。このような現象は、人事・採用に関わる皆様の本意ではないところだと思います。
実は最近の大学は出席管理が厳正化されて、大学生活で最も長い時間は日常の学業活動になっています(下図参照)。逆にガクチカでのエピソードによく使われる課外活動の時間は大幅に減少しています。また、今後の社会ではリスキリングをすることが必要ともいわれています。
このような大学生活も変化した現在の選考では、人事・採用の皆様はもう少し、日常の学業場面での意図・目標・行動に着目する面接を実施されることが重要だと思います。
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株式会社履修データセンター 代表取締役 |
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学びがキャリアに繋がる社会を創る 日本の大学生が課外活動ばかりに注力し、学業活動に力を入れない現在の大学環境は社会的な問題です。当社は企業の採用場面で履修履歴を活用した学業活動の適切な評価を促進することで、大学生が学業に力を入れることが報われる社会の実現に努めています。 |
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