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専門家コラム

デジタル世代の新人育成のヒント(最終回)

2016-04-11 テーマ: デジタル世代の育成法(新人研修の進め方)

デジタル世代の育成法:その1「仕事の指示は攻略本(マニュアル)の要領で丁寧に」

あるとき親しい経営者と子育て談義の中で、こんな話をしました。「社長はお嬢さんが大学生になるまで、できるだけ不自由しないように、いろいろ与えて育ててきませんでしたか?ですから、大人になったのだから自分で考えろと言っても、難しいでしょう」その時は社長も「言われてみればそうかもしれないなあ」と言っていたのですが、後日お会いすると「中西さん、先日の話はとてもためになった。実際我が社の中堅社員も一緒だったよ。今まで以上に丁寧に説明したら、仕事ぶりが良くなった」と言われたことがあります。丁寧にし説明や、あるいは指示をすることは相手のリスクを減らすことにつながります。デジタル世代にはできるだけ不安を取り除いてあげるために、取扱説明書にあるのような丁寧な説明が必要なのです。

デジタル世代の育成法:その2「仕事のルールを作らせたり、変えさせたりする」
デジタル世代が不評を買う一つに「言われた以上の仕事をしない」ことがあります。これも逆に考えれば「余計なことはしない」のですから、管理者から見れば使いやすい部下と言えるのではないでしょうか?しかもルールに対する疑いがないだけ吸収力も抜群です。おそらく「ルールは決められていて、変えられない」と考えているるからでしょう。そこで「はみ出だしていいんだよ」と言われても、はみ出した経験がありませんからないので二の足を踏むのは当然です。デジタル世代にもルールを変えて欲しいと期待するのであれば、ルールを作ったり変える経験をさせることが必要です。例えば業務報告のタイミングや報告書のフォーマットを作成させるところから始めても良いでしょう。

デジタル世代の育成法:その3「答えがあるなら、先に教える」

ルールを受け入れやすいことと似ているのですが、デジタル世代は成功するための方法があると考えています。しかも吸収力は抜群です。ですから、良い方法があれば惜しまずに教えたほうが良いのです。アナログ世代が持つの経験を出し惜しみせず、早く教えたほうが仕事の成果がも出ます。ただし、アナログ・デジタル両世代にとっても未経験な課題に直面したときは、もはや解決法はありません。その時こそ「自分で考えろ」と言ってもいいし「一緒に考えよう」と言えば良いのですだと思います。

デジタル世代の育成法:その4「一つのやり方にこだわらず、他の方法を探させる」

また「打たれ弱い」とされるデジタル世代は「壊れたら取り替える」フットワークの良さが売り物です。TVで「努力」と「根性」のスポ根ものを見て育った世代には理解しがたいことかもしれません。忍耐強く一つのことを続けて成功することがドラマのモデルになっているからです。アナログ世代は概して独自のこだわりがあってあきらめが悪く、途中放棄や撤退が苦手で、時として損失を拡大してしまいます。対照的に、デジタル世代は選択肢が多い時代に育ち、何かを我慢しながらひとつの事にしがみつく必要なくかずに育ってきましたたのです。確かに選択肢の多い時代に、無理してひとつにこだわる理由はないのかもしれません。
ここで、ただしアナログ世代が目を光らせておくべきポイント注意点があります。それはあくまでも、執着しなくて良いのはいようにするのは「方法」であってることです。仕事の「目的」は容易に変えてはいけないという点です。目的を明確に伝えて、そこは変えないように注意しながら、方法は自分の判断で変えて良いことにします。ある会社の新人教育で聞いた話ですが、論文指導をすると、今の新人は言われた通りに内容を変えてしまい、へたをすると論文の骨子まで変えてしまうのだそうです。

デジタル世代の育成法:その5「判断基準を本人の中に形成する」

ここまで、アナログ世代の長所と欠点、デジタル世代の長所と欠点を見比べながら、育成法を解説してきました。最後にデジタル世代の育成において乗り越えるべき難しい課題が残っています。それは、彼らが判断基準を他者依存することです。答えや攻略法を学んでばかり来たので、自分で答えを探す訓練が出来ていません。正解が用意されている入試問題とは違って、実社会では自分が導いた答えが合っているかどうかはわかりません。他人の出した答えではありませんから、その答えには責任がともないます。ある会社で聞いた話ですが、新入社員が遅刻した際「事前にネットで調べたら間に合うはずだった」と言い訳したそうです。遅刻が不可抗力だったと言いたいらしいのですが、遅刻の責任をネットや交通機関に転嫁しているだけのことです。
交通機関の遅れに関してはアナログ世代の面目躍如というべき印象深いエピソードがあります。ある会社の部長研修の時です。最寄駅に乗り入れている電車が、研修当日の朝、全部止まってしまったため、事務局は中止も考えていました。ところが、20名の受講生全員が開始時には全員揃っていたのです。各自で交通手段を考えて、色々な経路を使って会場まで来たのでした。さすがアナログ世代(!)ですね。

判断基準を育てる2つのアプローチ

どのように判断基準を自己に形成するかとなると、哲学的なテーマにも思えますが、実務上は2つのアプローチがあると思います。1つ目は、管理者が判断をするときに、その判断の根拠なり判断のプロセスなりを、ひとつひとつ教えていくこと。これは、管理者自身が持っている判断のマニュアルを、デジタル世代に移植していくという育成方法です。2つ目は、本人に判断をする場面を与え、それを増やしていくこと。こうと書くと「要するに自分で考えろってことじゃないか」とお叱りを受けそうですが、仕事の目的や方法を教えることと、判断の仕方を教えることは異なります。例えば企画書を書かせる時に「まずは自分で考えてみろ」ではなく、内容や書き方を教えて、いくつかの見本を示した上で取捨選択させて、選択の基準(判断基準)を養っていくような育成方法をお勧めしたいと思います。

ハイブリッドなビジネスパーソンの登場を期待して

アナログ世代は現在(の日本)にはない旧来の価値観を持ち、デジタル世代は新しい時代の価値観を持ち、相互に補完できる関係にあると私は考えています。デジタル思考をアナログに変えさせるのではなく、今の時代に求められる新しい思考を二つの世代がお互いに協力して生み出していくことが必要なのではないでしょうか。日本全体が、相も変わらず自動車等の輸出型産業による成長モデルしか見出せていないのも、「Google」や「Amazon」や「フェイスブック」が日本から生まれないのも、アナログ思考にとらわれているからではないでしょうか。アナログ世代の持てる知識や経験を余すところなくデジタル世代に教えて、もはや教えることも教わることもななくなった時に世代間のギャップがなくなり、両者が協力して新しい知識や技術に挑戦することができるようになるのではないでしょうか。アナログとデジタルが融合したハイブリッドな思考が、新しい技術や市場を切り拓いていく。その日が早く来ることを期待して、コラムを終わりたいと思います。

株式会社M&RConsulting
400社4万人以上の指導実績があります。『人と組織の善循環』を拡げることが使命です。
研修プログラムも自ら開発し、講師として受講者が明日から実務で役立つツールの提供を心がけています。サラリーマンとしての経験とコンサルタントとしての経験をバランスさせ、理論に走らず受講者の立場や仕事内容に応じたアドバイスを心がけています

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